WAM経営動向調査分析
社会福祉法人経営動向調査の概要
2026年6月調査|特別養護老人ホーム運営法人351法人の景況感
独立行政法人福祉医療機構(WAM)は2026年6月、特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人351法人を対象に「社会福祉法人経営動向調査」を実施した。この調査は経営者・事務長へのアンケートに基づき経営の実感(景況感)をDI(ディフュージョン・インデックス)という指数で示すもので、厚生労働省が実施する介護事業経営概況調査(決算書ベースの実額データを集計する調査)とは調査主体・調査方式が異なる。DIは、ある項目について最も良い選択肢を選んだ事業者の割合から最も悪い選択肢を選んだ事業者の割合を差し引いた数値で、プラスが大きいほど良好、マイナスが大きいほど悪化した回答が多いことを示す。
1. 特養の経営DIは2026年6月調査で全体として小幅に改善
WAMの2026年6月調査によると、特別養護老人ホーム(特養)のサービス活動収益DIは2026年3月調査の△15から6月調査の△5へ、10ポイント改善した。サービス活動収支(黒字・赤字)DIも同時期に0から1へと、ほぼ収支均衡ラインまで持ち直した。稼働率DIも△13から△5へ8ポイント改善している。
| 指標 | 2026年3月調査 | 2026年6月調査 | 変化幅 |
|---|---|---|---|
| 【特養・経営DI】 | |||
| サービス活動収益 | △15 | △5 | +10pt |
| サービス活動増減差額 | △22 | △12 | +9pt |
| サービス活動収支(黒字・赤字) | 0 | 1 | +1pt |
| 施設全体の従業員数 | △57 | △54 | +3pt |
| 介護職員の確保 | △85 | △87 | △2pt |
| 人件費 | 54 | 58 | +4pt |
| 稼働率 | △13 | △5 | +8pt |
| 他施設との競合 | △45 | △46 | △2pt |
| 待機者 | △29 | △34 | △5pt |
| 【社会福祉法人全体・経営課題(複数回答、%)】 | |||
| 職員確保難 | 66.7% | 71.2% | +4.6pt |
| 人件費の増加 | 70.1% | 65.5% | △4.6pt |
△はマイナス(悪化・不足方向)を表す。DIは第1選択肢回答割合-第3選択肢回答割合(人件費のみ算出が逆)
2. 介護職員の確保DIは9項目中もっとも深刻で、2026年6月調査でさらに悪化
収支・稼働率が改善する一方で、特養の介護職員の確保DIは2026年3月調査の△85から6月調査の△87へと2ポイント悪化した。介護職員の確保DIは、WAMが今回調査した9項目(業況・サービス活動収益・サービス活動収支・従業員数・介護職員の確保・人件費・稼働率・他施設との競合・待機者)の中でもっとも深刻な水準である。
3. 特養の収益変動は「利用者単価」より「利用者数」が主因
特養では、2025年度に前年度比でサービス活動収益が増加した施設(n=70)のうち64.3%が「利用者数の増加」を理由に挙げ、減少した施設(n=56)でも87.5%が「利用者数の減少」を理由に挙げた。介護報酬改定や加算取得による単価要因を理由に挙げた施設は、増加施設で24.3%、減少施設で10.7%にとどまる。
4. 特養の人件費・業務委託費は上昇が継続
特養の人件費DIは2026年3月調査の54から6月調査の58へ上昇し、コスト増加の実感は強まっている。特養の定員1人当たり業務委託費(全体)も2021年度343千円から2025年度374千円へ5年連続で上昇し、直近5年間で全体の73.2%の施設が委託費の増加を経験した。
経営・実務インプリケーション
- 特養の経営者・事務長は、自施設の収支改善が介護職員確保の実感改善を伴っているかを分けて確認する必要がある。
- 特養の収益変動要因は「利用者数」と「利用者単価」で分解して確認し、稼働率対策と加算取得対策を混同しないことが望ましい。
- 特養の業務委託費(特に給食業務)の上昇ペースは、直近5年の実額推移で自施設と比較すると把握しやすい。
- 本調査はWAMによる景況感(DI)調査であり、厚生労働省の介護事業経営概況調査による実額データと併せて確認することで、「体感」と「実額」の両面から特養の経営状況を把握できる。
注記・出典
- 本調査は独立行政法人福祉医療機構(WAM)が実施する景況感(DI)調査であり、厚生労働省の介護事業経営概況調査(実額の収支データ)とは別の調査主体・調査方式によるもの。両者を混同しないこと。
- 調査対象はWAMに登録しているモニター法人531法人中、有効回答351法人(回答率66.1%)。母集団全体への代表性は別途確認が必要。
- DIは各項目の第1選択肢の回答割合から第3選択肢の回答割合を差し引いて算出(人件費のみ算出が逆)。数値は四捨五入のため合計が一致しない場合がある。
- 月次の時系列推移(2023年6月〜)はグラフ画像として掲載されているが、本レポートでは数値表で確定している「2026年3月調査・6月調査・変化幅」のみを使用した。
- 独立行政法人福祉医療機構(WAM)経営サポートセンター「社会福祉法人経営動向調査の概要」(2026年7月3日公表、2026年6月調査)
作成:AUL(aul-dox.jp)/生成日時: 2026-07-19 21:06
WAM経営動向調査分析・ダッシュボード
社会福祉法人経営動向調査の概要
2026年6月調査|特別養護老人ホーム運営法人351法人の景況感
独立行政法人福祉医療機構(WAM)が2026年6月に実施した特別養護老人ホーム運営法人351法人への調査によると、介護職員の確保に関する景況感指数(DI)は△87となり、調査した9項目中もっとも深刻な水準までさらに悪化した。同時期にサービス活動収支DIや稼働率DIは改善しており、経営指標の改善が人手不足の解消を伴っていないことを示している。
01主要指標
介護職員の確保DI
-87
▼ -2pt2026年6月調査・全項目中最も深刻人件費DI
58
▲ +4pt2026年3月調査比、増加圧力が強まるサービス活動収支DI(黒字・赤字)
1
▲ +1ptほぼ収支均衡ラインまで持ち直し稼働率DI
-5
▲ +8pt改善傾向待機者DI
-34
▼ -5pt待機者の減少傾向が強まる定員1人当たり業務委託費
374千円
▲ +9.0%2021年度比・5年間経営課題「職員確保難」回答率
71.2%
▲ +4.6pt社会福祉法人全体、複数回答で最多02主要チャート
特養の経営DI一覧(2026年6月調査・最近)単位:DI(%ポイント)
出典:独立行政法人福祉医療機構(WAM)経営サポートセンター「社会福祉法人経営動向調査の概要」(2026年7月3日公表、2026年6月調査)
改善する経営指標と悪化する職員確保(3月調査→6月調査)単位:DI(%ポイント)
出典:独立行政法人福祉医療機構(WAM)経営サポートセンター「社会福祉法人経営動向調査の概要」(2026年7月3日公表、2026年6月調査)
収益増減の主な理由(2025年度実績)単位:%
出典:独立行政法人福祉医療機構(WAM)経営サポートセンター「社会福祉法人経営動向調査の概要」(2026年7月3日公表、2026年6月調査)
定員1人当たり業務委託費の推移(全体)単位:千円
出典:独立行政法人福祉医療機構(WAM)経営サポートセンター「社会福祉法人経営動向調査の概要」(2026年7月3日公表、2026年6月調査)
04データから読み取れる論点
論点 A / 人材
介護職員の確保が全項目中もっとも深刻
介護職員確保DIは△87とさらに悪化し、経営課題調査でも「職員確保難」が71.2%で最多回答となった。他の指標が改善する中でも、この課題だけは悪化方向にある。
論点 B / コスト構造
収支は小幅改善もコスト圧力は継続
サービス活動収支DIは黒字方向へ、稼働率も改善したが、人件費DIの上昇と5年連続の業務委託費上昇(343→374千円)が示すように、構造的なコスト圧力は解消していない。
論点 C / 収益構造
収益変動は「単価」より「利用者数」が主因
収益増加・減少とも、8割前後が利用者数の増減を理由に挙げている。介護報酬改定や加算取得(単価要因)よりも、稼働率・利用者確保の巧拙が収益を左右している。
05主要DI・経営課題の一覧
| 指標 | 2026年3月調査 | 2026年6月調査 | 変化幅 |
|---|---|---|---|
| 【特養・経営DI】 | |||
| サービス活動収益 | △15 | △5 | +10pt |
| サービス活動増減差額 | △22 | △12 | +9pt |
| サービス活動収支(黒字・赤字) | 0 | 1 | +1pt |
| 施設全体の従業員数 | △57 | △54 | +3pt |
| 介護職員の確保 | △85 | △87 | △2pt |
| 人件費 | 54 | 58 | +4pt |
| 稼働率 | △13 | △5 | +8pt |
| 他施設との競合 | △45 | △46 | △2pt |
| 待機者 | △29 | △34 | △5pt |
| 【社会福祉法人全体・経営課題(複数回答、%)】 | |||
| 職員確保難 | 66.7% | 71.2% | +4.6pt |
| 人件費の増加 | 70.1% | 65.5% | △4.6pt |
△はマイナス(悪化・不足方向)を表す。DIは第1選択肢回答割合-第3選択肢回答割合(人件費のみ算出が逆)